初めての経験は何かと緊張するものです。
とはいえ何事も経験からしか得られない。
不安と楽しみ、両方を感じながらの遠征でした。
きっかけは会話から
7月14,15日の両日、名古屋へ遠征することを決めました。整骨院は一日お休み、木金の二日間の弾丸遠征です。これは大相撲佐田の海関よりコンディショニング調整の依頼を受けたことがきっかけでした。
佐田の海関を施術するようになって三年以上が経過しますが、以前治療時にこんな会話をしたのを覚えています。
山田「佐田の海さんって地方場所でのコンディショニングはどなたか決まった人が施術するんですか?」
佐田の海関「いや地方場所はお願いできる先生がいなくて」
山田「じゃあ大変ですね。今度名古屋あたりなら行けるかな〜」
佐田の海関「できればぜひ来てもらえませんか?もし来てもらえたら本当に助かります!」
簡単に書けばこんな会話でした。
東京場所ではボク以外にも施術にあたっている先生が二人いるのは知っています。だから東京場所でアクシデントがあったとしても、ボクを含めた三人のうち誰かしらがケアができる状況です。
そして東京場所では初日に当たる日曜日の前日、つまり土曜日にボクが施術をするのがルーティーンのようになっていますが、地方場所では一週前の土曜日が最終の施術になってしまいます。
地方場所の時には最終調整ができない。そしてアクシデントに対応しにくい。
これは実際に身体面での影響はありますが、何かあったら?の際に「安心感」があるかどうかの問題はけっこう大きいものです。
星を大きく伸ばした五月場所の後、番付は前頭五枚目まで上がりました。
念願の目標とする三役(小結)までもう少しで手が届きそうな位置まで来ました。
そこで依頼があったんですね。依頼というより前述した会話を佐田の海関も覚えていたみたいでして。
ボクもその目標の後押しがしたい、素直にそう思ったので名古屋行きをその場で決断しました。
いざ名古屋へ
ベッドや治療機器・テーピング類を持参するため今回は車での移動です。
調べたところ約4時間半くらいで到着予定とのこと。このくらいなら全然問題ありません。
行きは首都高速が少し混雑していた程度で順調に境川部屋宿舎近辺のビジネスホテルへ到着。
宿舎への到着は19時で約束していたので大相撲はテレビ観戦していました。この日の結びに一番は横綱照ノ富士関が今場所優勝した逸ノ城関に寄り切りで敗れた一番でした。
遠征中の二日間はずーーーっと雨でした。降っていない時間がないくらい、そして時折バケツを引っくり返したような雨脚だったので車は走りにくかったです。しかもみんなけっこう飛ばすんですね、向こうの人って。
ちょっとくらいは観光も?なんて思ってましたが諦めました。そして美味しいもの食べよう!なんて思ってましたがこれも断念しました(理由は後述してます・・・)
先に書くと帰りは事故渋滞が二度も発生し7時間ちょいかかっての帰宅でした。
スムーズに移動できれば名古屋遠征程度なら今後も車での移動で問題なさそうです。
宿舎到着&施術
19時に宿舎へ到着し、若手力士の皆さんは晩御飯の支度の真っ最中。
夏だから?なのかみんな上半身は裸、いわゆるパンイチで過ごされていますがコロナ禍もありマスクをしている力士もして、なんだか面白いというかなかなか見られない光景でのお出迎えです。
そして一緒にちゃんこ鍋をご相伴に預かりました。この日は鶏ベースの塩ちゃんこでしたね。
若手力士はとんでもないゴハンの量を先輩方の前で食べています。聞くところによると見ていないと少ししか食べない力士もいるそうで、やはり相撲は「食べるのも稽古のうち」なんだと実感しました。
その後は自分自身もお腹パンパンのまま佐田の海関の施術開始です。
初めての場所での施術は最初こそやりにくい面もありましたが慣れればどうってことはないですね。ひと通り施術を終え身体を動かしてもらい、納得してもらった上でこの日の施術は終了。
あとは翌朝の朝稽古をボク自身の目で見て、そして佐田の海関自身にも確認してもらい再度施術を行うことにしました。
翌朝の朝稽古。先に若手力士が稽古を始めています。そしてその後に関取が徐々に身体を動かし始めます。
そして師匠境川親方の登場。ハッキリと緊張感が出ました。ピーンとした空気感が一気に稽古場に張り詰めたのは肌で感じられました。
これは格闘技をやっていた時にシーザー会長がジムに登場した時の空気感に似ていたな・・・。
朝稽古後に朝御飯もご一緒させてもらいました。境川部屋には佐田の海関の他、何名かの力士を施術していますので人見知りが強いボクでも何とかなったのはありがたかったですね。
食事後にまたまたお腹パンパンのまま最後の施術。しっかり動きの確認をしてもらいつつできることはすべてやっておきました。
遠征前は不安もありましたが、整骨院以外の場所でも何とかなるもんです。
基本的に腕一本で仕事をしている身としてはそれがあらためて確認できたし、今後トップアスリートからの依頼があっても対応できると確信を持てたのは収穫でした。
あ、そういえば以前も女子バレーボール日本代表選手を出張治療してたんだっけな・・・。
▲写真はこの一枚だけ。ミーハーで行っているわけでもないし、そもそもあの状態で写真なんて取れるわけないでしょ。って感じでしたからね。現在の部屋頭は佐田の海関なので幟はこの順番なんですね。
さて名古屋場所の成績は?
今場所の佐田の海関の成績は7勝8敗の負け越しでした。
ただ10日目を終えて2勝8敗の状態から最後5連勝してこの成績なのは、35歳にして自力がついていることとメンタル面での充実は明らかです。これにはさすがとしか言いようがありません。
遠征しての施術後になかなか星が上がらなかったこともありボク自身もしんどい思いがありましたが、関取本人はもっと苦しい状況だっただろうと推測されます。
あの状況から盛り返せるのはけっこう大変なことなんです。大相撲に関わるようになり、15日間毎日緊張状態で相撲を取り続けることがいかに大変なのかは分かってきたつもりです。特に幕下以下の力士は7番しかありませんから一つの星が十両以上に大切なのも分かりました。
場所後に「先生のおかげで15日間終えることができました」と報告があったのは嬉しかったな〜。役に立っていたのかどうかはボクにはよく分からないけど、15日のうちに少しでも身体も心も楽にできる瞬間を提供できたのはきっとプラスになっているのだろう。と自分に言い聞かせています。
これが二日間の記録です。
整骨院を休診し患者さんにも協力していただきましたのでブログにまとめました。協力していただいた患者の皆様ありがとうございました。この場を借りて感謝申し上げます。
今後は名古屋の他、福岡・大阪にも遠征することになりそうです。その時は皆さんまたご理解ご協力のほど宜しくお願い致します。
やまだ整骨院 山田敬一
サイモン式テーピングマスター代表
メンタル心理カウンセラー
G-nius5メディスン認定イメージトレーナー
藤村正宏氏主宰・エクスマ塾45期卒/エヴァ10期卒/ウルエヴァ1期卒
2008年東京都文京区本駒込に「やまだ整骨院」を開院。
プロ格闘技選手のトレーナーを15年務める。
現在は青山学院大学女子バレーボール部、大相撲佐田の海関、パリ五輪代表女子柔道57kg級舟久保遥香選手のコンディショニングサポート中。
治療現場では「治療を通じてアナタの心と身体を応援します」をモットーに活動中。
テーピングの開発・販売・講習もしています。
(講習に関しては随時ブログにてお知らせしています)
スポーツ歴は中高生時バスケ、専門学校時に柔道、社会人になり格闘技(キックボクシング)をしていました。
修行期間13年を経て34歳で独立開業、35歳でアキレス腱断裂、41歳で大動脈解離を患い生死の境を彷徨いました。
もうスポーツは積極的にはできませんが、身体とメンタルの両面をサポートし、アスリートを目標達成へと導きます。
2020年4月よりオリジナルプロテインを販売開始。
学生競技の現場を体験して「継続して飲むなら美味しくて、身体にいいプロテインを飲んでほしい」その想いからオリジナルプロテインを作りました。
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